千曲市の民話

 


  1  民話雨浦地蔵尊   
    昔、長福寺に隆蔵という小僧があった。 どこの子かわからないが、小さい時からお寺で育てられていた。村人達が干ばつで困っているありさまを隆蔵は見て、峠に上り峯の池へ行って、土堤へ向かって根気よく坂下へと、水口を突き坂下へ水を流して里をうるおした。坂裏の人達は池水が来ないので騒ぎ出し、池へ上がって見ると小坊主が長い竹槍をかかえて、坂下へ流れる水を楽しそうに眺めていた。坂裏の人びとは小僧をつかまえて、赤蟻の巣を掘ってそこへ投げ込み、峠の茶屋の粉臼を持って来て据えた。この噂が坂下へ伝わり、村中総出で赤蟻の巣を掘ったが、粉臼は出たが小僧は出なかった。人びとは粉臼が隆蔵小僧の身代わりだと背負って帰り、雨浦せぎのほとりへ祠を建て感謝して祀った。  
       
  2  南無龍王大権現雨降らせ給えな   
     これは、昭和初期の水田農家の雨乞いの祝詞であります。その頃の田植え時期には、ほとんど水はありませんでした。そこで、みんなで龍王様にお願いをしたときの願いごとでありました。 私たちの子どもの頃、竜王山には白水があると聞いていたので、わらび採りの頃探してみましたが頂上東北面に一坪足らずの池があり白水ではなく城水でありました。この城水は、どんな日焼け年にも水涸れすることがないとのことで、雨乞いの水神様になったものと思われます。  
       
   3 クワバラ、クワバラと天神さま   
      西区に天神さまが祀ってある。境内の梅の木に雷が落ちた。その時、通り合わせた桑原左近将監様が雷を見つけ大いに怒り、「天神さまの大切な木へ、不らちを働く無礼者め、おのれ桑原大夫様の領内を知らぬか。」と生け捕りにして梅の木へ縛りつけ、世の見せしめにと「さらし者」にした。雷は、はずかしくて遂に大粒な涙を流し、「これからは決して桑原に落ちないから許してください」と、心からわびをしたので、左近の将監もかわいそうになり縄を解いてやった。雷は、ほうほうの態で空へ帰って行ったというが、その後、雷が鳴る度に、「クワバラ、クワバラ」と唱えると雷は落ちないと世間へ広まった。  
       
       


参考文献 
 さらしな歩紀 千曲市川西地区振興連絡協議会